日々徒然

社会にの荒波に揉まれつつも49%後向き51%前向きに生きる。

山口県上関町、風力発電に着手

 

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www.yab.co.jp

周辺に生息する希少な動物や植物などへの影響を調べる環境調査が始まりました。
今後、騒音や振動などに関する測定も行われ
町は調査結果が分かる秋以降にも近隣住民への説明を行う予定です。
風力発電事業により年間およそ2億円の売電収入が見込まれていて
これは年間の町税収入とほぼ同じ額に相当します。
=上関町 柏原町長=
「今は本当にわずかでも収入を得るための手段を講じていかなければいけないと。
私としては、目標年度に向けて着々とひとつひとつ進めていきたい」
実施設計に向けて地盤を調べる地質調査や測量も始まる予定で
町は2016年度中の着工、2018年12月の稼働を目指しています。

 

原発建設が凍結し、事実上の頓挫状態になった為、補助金を使い風力発電を建設する模様。上関町は今山口県一過疎化が進行している自治体である。その為か風力発電2基だけでも一自治体の全ての税収を賄えるという事に驚愕した。

中国新聞の記事によると、2012年に13億円あった原発交付金は2015年の今や1億円程度に減少した模様。危機感を感じた上関町は原発建設が不透明になるので、藁にもすがる思いで交付金を利用した風力発電に踏み切ったのでは無いだろうか。現在、上関町は国からの原発交付金を一般会計に計上し、原発交付金ありきの運営をしている。

周辺自治体が財政難に喘ぐ中、上関町が単独で存在し続けれたのはこの巨大な原発マネーのお陰だった。原発マネーは過疎化の著しい上関町に大いな恵みをもたらした。公共設備の整備や中学生以下の医療費無料や老人の通院バス等福祉の充実である。

2011年当時の私の記憶だと、原発事故の煽りもあり、周辺自治体の周南市、下松市、光市等は軒並原発建設に反対していたと思う。尤もそれらの自治体は原発建設をしても距離が離れており交付金も光市を除いては対象外であり、それ程旨味もなく、リスクが大きいという要因もあった。周南市議会は上関原発の中止を可決し、下松市議会は凍結を可決した。当時の二井関成山口県知事は建設凍結を中国電力に要請した。また、2012年には当時の光市長が原発交付金の受け取りを拒否する一面もあった。

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 光市の市川熙市長(64)は2日、中国電力の上関原発建設計画の電源立地地域対策交付金として光市に交付される見込みの約14億円について「受け取るつもりはない」と述べた。同交付金が配分される見込みの周辺2市3町で、トップが受け取らないことを明言したのは初めて。

(中略)

 市川氏は上関原発計画について「市民は不安や安全に大きな関心を持っている。私が生きている間は絶対にできないだろう。全国的にも新しい原発ができるような状況ではない」と指摘。電源立地地域対策交付金も「事業が進まない限り交付されないし、受け取るつもりは全くない」と明言した。(上木崇達)

(2012年8月3日朝刊掲載)

しかしながら、当時は原発事故直後で反原発の世論が強かったが、現在の原発推進の安倍政権下では世論は大分変わってきているかもしれないのでこの限りではない。原発は建設から運営で大きな雇用と経済効果を生み、過疎化の進んでいる上関町や周辺自治体にとっては救世主的な存在だ。

ところで、もし上関町が合併をして難事を解決する方法を取るとして、平成の大合併時の特例交付金もない今、今更上関町が周辺自治体と合併出来るだろうか。するなら最も有力なのは地域の拠点の柳井市か隣町の平生町あたりになるだろう。しかしながら、少子高齢化と過疎化で産業が衰退しつつある中、高齢化で医療や福祉の更なる費用が必要となる上関町を受け入れれる体力があるだろうか。

この上関の周辺の室津半島には上関町の原発建設予定地を眺めるように数個の風力発電設備がある。風力発電を選んだ平生町原子力発電を選んだ上関町。その風車はまるで対比される電力同士のにらめっこのようで、自分を物思いにふけさせるものだった。

(因みに写真は室津半島にの大星山付近にある風力発電設備。)

 

原発計画が浮上してから、四半世紀もの間、原発建設で町民を二分化させ、思想の違いによる争いが耐えなかったという。酷い場合は違う意見のものを無視したりする等陰湿な嫌がらせもあったらしい。風力発電設備建設に関しては、原発建設賛成派、反対派両陣営にも好意的で、走り出しは快調のようだ。風力発電設備による潤いが、四半世紀もの間の町民の確執を解けさせればと思う。

 

原発両派、一定の評価 山口県上関町の風力発電構想 住民の理解が鍵 山口 | ヒロシマ平和メディアセンター

山口県上関町が検討を始めた風力発電機の建設構想について町内では20日、中国電力上関原発計画の推進、反対両派の住民とも自然エネルギーによるまちづくり構想に一定の評価を示した。風力発電機は周辺住民への騒音問題などを招く恐れもあり、町は採算性なども含めて慎重に事業化を探るとみられる。(井上龍太郎)

 関係者によると、建設候補地は同町長島の上盛山(315メートル)で、風力発電機2基の設置を検討。発電した電気は、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を利用して売電する見込みだ。観光振興の狙いもあるという。

 上関原発の準備工事の中断が長期化し、国からの原発財源が激減する中での構想。原発推進派の上関町商工事業協同組合の柏田真一代表理事(39)は「一定の収入が町に入り、設置工事の費用が地元で動く。悪くない構想」とみる。一方で「町が原発誘致を断念したとみられないかの不安はある」と漏らす。

 反対派の上関の自然を守る会の高島美登里代表(62)は「自然エネルギーを活用する方向性は評価できる」とした。「環境に負荷をかけず、野鳥の渡りルートも妨げない必要がある」とし、事業を静観する構えを強調した。

 上盛山の北約9キロの大星山(平生町、438メートル)では風力発電機7基が稼働している。上盛山も風の条件は似ているとみられる。

 一方、大型の風力発電機は周辺に騒音や低周波音をもたらす恐れが指摘されている。下関市安岡沖の洋上風力発電計画では、住民が反対運動を展開している。上関町の検討でも住民の理解が大きな要素となりそうだ。

(2014年10月21日朝刊掲載)

 

景気改善は今の不景気の中、貧しい地方自治体には原発は希望とも言えるカンフル剤。事故が起これば数世代に渡り不利益を被る事故のリスクと、この熾烈な不景気の中食っていくために必要な金。この二項対立は難しい問題なのかもしれない。

上関町にとっては原発という公共事業は滅び行く故郷の再起を図れる夢だったのかもしれない。

 

余談だが、この周辺にはかつて3世紀末から7世紀にかけて、熊毛王と称する豪族が治める強大な国があった。当時、室津半島と本州は分離しており、その間の現在の柳井市から田布施町を経て平生町の平生湾に至る古柳井水道という海峡があった。熊毛王はその海峡で海運をし、約300年間も大和王権に支配されることもなく、脅威を与える存在となった。

室津半島周辺や田布施町平生町柳井市に散見される古墳群は当時の熊毛王の墓だとも云われている。

その去就は水道の閉鎖後、国力を失い、大和王権に組み込まれて滅亡した等諸説ある。

 

あとがき

足りない頭で自分なりに硬派を目指して書いたので優しい心でお願いします^^;

 

 

国策の行方―上関原発計画の20年

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山口県謎解き散歩 (新人物往来社文庫)

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山口あるある

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